盗んだものを全て「変えて」しまう泥棒  ようこそ 今俺のいる場所へ Ⅴ

jette55 / Pixabay

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嫌なものを見てしまった さっさと帰るべきだった

もうすっかり夜が更けている もう直ぐ午前零時だ

ようやくアパートへと続く路地へと入った 街灯があまり無いのでいっそう闇が濃い 俺は自然と早足になっていた

「おい待て 待ってくれ」 闇の中で突如、誰かが俺を呼ぶ声がした

俺はギョッとして辺りを見回すが誰もいない おかしいと思って前を向くといつの間にか正面に誰か立っている

暗がりで顔は良く見えない 背恰好は俺と同じくらい 服装もよく似ている

強盗か? はたまた幽霊か? 緊迫した空気が俺の周りを取り囲んだ

 

男は何も言わずにただじっと立っている

俺はその異様な雰囲気に圧倒されて言葉が出てこない 何者なんだ? 何の用だ?

「……返せ…」

「…なに?」

「…返せ…返してよこの泥棒 返せよ、この野郎!」

は? 泥棒? 俺が? あんたなんか会ったことはない それに他人のものを盗んだことなんて今まで一度もないんだけど

「あの…何を言っているのか…」

男は俺の言葉をさえぎって一方的に話し始めた

「あんたは泥棒だ 毎夜毎夜土足で踏み込んで全部ひっかきまわしてみんな持って行ってしまうじゃないか」

「いや…あの、人違いじゃないかと」

「いいやお前だ!お前だ!お前だお前だお前だお前だお前だお前だお前だお前だお前だ お前なんだぁ!」

尋常じゃない様子の男に俺は何も言えない

 

「お前はいつも俺のものを持っていく バラバラにして持っていく そして勝手に作りかえて自分のものにしてしまう それはもう俺ものじゃない ああもう俺のものじゃあなくなったぁ!」

ヤバいぞコイツ その泥棒って奴はコイツにいったい何をしたんだ?

「悪いが人違いだって! 失礼するよ いい加減にしないと警察呼ぶから」

俺が横を通り過ぎる時 男はすがりついてきた 何とか振り払う

「返してよ! 元に戻して返してくれ! 返せよぉぉぉぉ!」

背後で男は悲痛な叫び声を挙げ続けていた  俺はその場を逃げるようにして立ち去った

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アパートについた 後ろを振り返ってあの男が付いてきていないか確認してから自分の部屋に入った。

鍵を閉めて一安心したと同時にスマホに着信の通知が入った

心臓が一瞬止まりかけたが反射的にスマホを見る 友達からだった

ー もう帰った? ○○から旅行の動画来たからお前にも送るわ ー

脅かすなよ…

送られて来た動画には 俺と仲間たちがバカやって騒いでいた こんなとこ撮影するなよ全く

ソファに腰を掛け用意したビール片手に動画を見ていた時、ハッとした

 

動画にはさっきの男がいる すれ違いざまに見た顔が見える そして声が聞こえる 確かにいる!

こいつじゃない、あいつも違う、全員違う! 確かに俺たちの誰かだという確信があるのに分からない

ではいったい俺は何をした? 何を盗んだんだ?

「元に戻せよぉぉぉぉぉ!」 あの悲痛な声が聞こえた気がした

幻聴、幻聴だ 俺は恐怖を誤魔化すためビールを大量に流し込んだ そうだ全部気のせいだ

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